強弱の幅とタッチ感 [ピアノのこと]
音とタッチのお話しをしますがその前に、
ピアノという楽器を判断するうえで、「良い音」や、「弾きやすさ」というのを基準にする事が多いわけですが、やはりそれらは人によって感覚やお好みが違ってきますので、何が良いとか一概には言えません・・・。と言われてしまえば確かにそうなのですが、とりあえずそれを言っちゃあおしまいよ、という事で一つの考え方としてご一読下さいませ。
表は、「f : フォルテ」や「pp : ピアニッシモ」などの各強弱記号に対して、その音を出すために必要な ”鍵盤へ与える強さを数字にして(タッチ感)”表したものです。
簡単に申し上げますと、「3」の強さで弾いたら「p」が出て、「5」の強さは「mf」、もちろん「ff」を出すには「7」の強さ。
この様に強弱の幅が一定で音量・音色が統一されており、ピアノから簡単に弾きだせれば、それは「弾きやすい」という事です。
逆に申し上げると、これが一定でなく、上手くいっていないピアノというのはとても弾きにくく、「3」の強さで弾いたら「5、mf」が出てしまったり、「6」の強さである「f」が、ひとつの鍵盤だけは「4、mp」になる等。
「pp」から下の弱音表現は音すら出ない、なんて事もあります。
一台のピアノのなかでこんなバラつきがあると大変弾きにくいです。そしてそれは表現しにくいピアノでもあります。
さて、このようなバラバラな状況に陥ってしまうのには様々な要因があります。
鍵盤関係のメカニックに問題があるのか?
ハンマーの状態を含む整音が問題なのか?
調律のやり方?
設置場所や環境?
ハンマーや鍵盤の状態、調律、これら全てが最終的に発せられる「音」につながります。
タッチが軽いと言われるピアノに対してハンマーに調整を加えてそれが解決する事もありますし、逆に、音が鳴らないと言われる場合でもハンマーでなく鍵盤調整の問題である事も多いです。
何を判断して何をどうするかは調律師がピアノを通して決め、最良の方法をとって調整を施していきます。
そして一台のピアノを上記のようなバラつき無く、バランスよく仕上げる事が重要であり、そこから初めて「良い」という判断が出せるわけです。
やはり上手く調整されたピアノは、様々な弾き方に対して上手く応えてくれますし、感性をさらに刺激してくれるものでもあります。
豊かに響くピアノから豊かな表現力が身に付きます。
文:桃太郎