スタインウェイのアレが無くなった [スタインウェイピアノ]
こちらはスタインウェイのフルコンサートD-274の側面です。
この写真で「あれ?」と気づいた方は相当な方です。
この側面、いわゆるリムに今までのフルコンには付いていた「ある物」が付いていないのです。
スタインウェイのフルコンは今現在少~しデザインが変わってきまして、譜面台や突き上げ棒などのデザインもそうですが、この「ある物」も無くなりました。
さて、この「ある物」は結構前にブログでも取り上げた「ある物」なのですが、その時の写真が次の写真。
これは「ピアノに付いている謎のノブ」として以前ご紹介しました。
この「謎のノブ」が今は無いんですね。
上の写真と見比べて頂いてお分かりになられたでしょうか?
デザインはその時その時で移り変わっていくものなのです。
なお、このノブは見かけてもぐりぐり回してはいけませんよ。
文章:桃太郎
スタインウェイの保守点検(4) [スタインウェイピアノ]
以前より書き綴っておりましたスタインウェイ保守点検のお話ですが、さすがに長くなってきましたので今回で最終回です。
早速ですが、こちらは「ハンマーストローク調整」と言います。打弦距離調整とも言いますが、ハンマーと弦との距離を測定し適切な状態にします。
写真では専用の定規を当てて測っていますが、こちらも鍵盤深さと同様、メーカーや機種などによって値が変わってきます。おおよそ46〜49ミリ位の設定にはなりますが、鍵盤深さとの関係が密接ですのでタッチ感や運動量、パワーやコントロール性など置かれている環境も考慮し適切な寸法に揃えていきます。
ジャック調整に入ります。
連打性や細かいニュアンスが出せる様に調整します。
しっかりと部品を見て正確な位置にセッティング。
以前も伝えましたが調整をする度に「調整前・調整後」を確認します。タッチや音の変化を確認しながらすすめる事に意味があります。
次の写真ではハンマーと弦の最接近距離を調整しています。
こちらもピアノメーカーや機種によっても変わりまして1〜3ミリ辺り。
スタインウェイの適正距離がありますので従って全ての接近距離を揃えていきます。
この調整は特にピアニシモから下の弱音領域の音色・表現力にも影響していきます。
この作業も目を凝らしていく作業です。特にフルコンは姿勢もキツく腰にキマス。
さてさて色々と解説してきましたが、とりあえず今回シリーズはこれ位にします。
もちろんまだまだこの先も重要な整調も多く、音を止めるダンパー調整や更には音色を作る整音もあります。
本当に多くの部品から構成されるグランドピアノ。
そしてスタインウェイともなりますと更に高度な精度や状態が求められます。
また機会があればお伝えしたいと思います。
文:桃太郎
スタインウェイの保守点検(3) [スタインウェイピアノ]
以前からの「スタインウェイの保守点検」についてブログの続き。
写真は鍵盤筬(オサ)の裏です。筬とは簡単に言いますと全ての鍵盤及びアクションが収まっている台の様な(引き出しの様な)物です。
この筬の裏に真鍮の丸い金具がピョコっと出ています。
写真の真ん中やや下の金具で、6箇所付いています。
実は鍵盤筬の手前側と奥側は本体棚板に接地していますが、中央部はこの金具が「ほんの僅か」接しているだけなのです。
この部分の調整は非常に重要で、タッチに影響する事はもちろん、音色にも影響します。
先程申し上げた「ほんの僅か」の量がポイントとなり、接地具合は湿度の影響も受けますので、ピアノを見る度によく確認して変化を認識しておく事が重要です。
次の写真は鍵盤の高さを揃えている所。
「鍵盤ナラシ」という作業で、鍵盤の高さを計測し全ての高さを揃えていきます。
白鍵の上に専用の定規を置いて測っていき、高い・低い鍵盤は専用の紙で揃えていきます。
ちなみにスタインウェイの鍵盤は真横から見ますと、左右端に比べて中央辺りがほんの少し高くなっています。
鍵盤の高さは「鍵盤の深さ(鍵盤アガキといいます)」の基準になりますので正確に揃えていきます。
写真の手が持っている「半透明の物」は鍵盤の深さを揃える「アガキ定規」という物です。
写真のアガキ定規は現在スタインウェイで使用されているタイプですが、鍵盤深さは各ピアノ・機種などによっても若干変わり9.8〜10.3ミリくらい、各メーカーの平均一般的には10ミリ程でしょう。
次の写真は鍵盤アガキで使用するスタインウェイの紙です。
厚さは色分けされており、全ての鍵盤を適切な深さに揃えていきます。
この紙の直径サイズが小さいものは先述の鍵盤ナラシで使用します。
最初に述べました筬の状態は鍵盤ナラシ・アガキに影響します。もっと言えば湿度変化によって変化していきますので、各季節に応じた認識や見越しが調整を行う上で必要になっていきます。
to be continued
文:桃太郎
スタインウェイの保守点検(2) [スタインウェイピアノ]
さて、先日の続きでスタインウェイの保守点検について一部ご紹介していきます。
こちらは鍵盤を全て外したところ。
「筬(オサ)」と呼びますが、この筬に鍵盤ピンなどが立ち並んでおります。
以前別のブログでもご紹介しましたが、この鍵盤ピンの状態がタッチ・音色にも影響しますので綺麗にしておきます。
同時にピンの前後傾きもチェックし、整然と並んでいるかをチェック。
もちろん清掃もしっかりと。
これは鍵盤の裏。
意外と鍵盤の裏の木部も汚れている事があります。別パーツである皮のカスの様な物が入り混んでベタベタしてますので綺麗に除去します。
鍵盤を取り付けたら、鍵盤のクロスの固さ(スティック)チェックをし、鍵盤の支点である穴(ホール)の固さも確認。
ホント色々やる事があるんですよ。
さて、ピアノ本体側もお掃除。
鍵盤+アクションがごっそり外れてます。
響板の上やフレームにもホコリがたまってきますので一気にお掃除。
鍵盤が乗っている台「棚板」も細かい隙間にゴミやホコリが入ります。
ついでに金属部品などで黒ずんだ所も綺麗に。
お掃除が完了したら本体の各種取付ネジなどの緩みも確認。キャスターも緩んでいる事があるんですよ。
お掃除+調整の終えた鍵盤筬にアクションを取付けていきます。
スタインウェイのネジですが、古いタイプはマイナスネジなのに対し、現在はポジドライブという形状を使っています。
従って、使用するドライバーもポジタイプで作業します。
さて、次からは各打弦機構の調整に入りますが、ここまで来た時点で結構「音・タッチ」が変わってきてるんです。
こういう所が保守点検の楽しい所だったりします。
文:桃太郎
スタインウェイの保守点検 (1) [スタインウェイピアノ]
ご存知のとおり、ピアノは定期的な調律が必要ですが、スタインウェイピアノはさらに細かい定期調整「保守点検」が必要です。今回はその作業の一部をご紹介します。
こちらはハンマーが弦に対し正確に当たっているかを確認しています。
グランドピアノは左側のペダル、シフトペダルを踏む事で弦に対しハンマーが右にシフトします。ハンマーと弦の位置が正確に合っていないとシフトをした時の位置・音色が合わなくなりますので非常に重要な調整です。
ちなみにスタインウェイは弦に対しハンマーが中心より若干右に位置しています。
これは弦に対しハンマーの位置を調整する方法で、ハンマーのフレンジ裏に紙を貼って調整します。
他にもハンマーの首(シャンク)に熱を加えて角度を修正する方法もあります。
88箇所全てが正確に弦に当たるように調整します。
なお、フレンジ裏に貼る紙はスタインウェイ専用の紙で、貼り方も決まっています。
ハンマーの位置が正確に決まりましたら、ハンマーが全ての弦を同時に叩いているかを確認します。
ハンマーを1本1本そっと弦に当て、ハンマーが同時に打弦出来ているかを確認します。当たりの悪いハンマーは削って修正します。
もちろん弦そのものの高さも確認しておく必要があります。
これらの作業で重要なのは調整前・調整後の「音」を必ず聞く事で、常に音の変化を聞きながら行います。
なお調整の際に状態をよく覚えておく事も重要で、例えば今回の様な作業であれば「どのハンマーが、どの様な状態で、どの様に調整したか。結果どうなったか」をしっかりメモし覚えておきます。もちろん他の調整や調律にも言える事で、細かい情報を蓄積しておく事で各ホールや会場のピアノがどの様に変化するかを把握する事が出来ます。
これはご家庭のピアノ管理にも通ずる事で、調律に訪問する度にピアノの状態をプラスへ導いていく為には重要な事です。
長くなりましたので、続きは次回に。
文:桃太郎